「金春月報」誌掲載:能楽研究家後藤和也氏がおすすめする能楽関連図書

能を読む 後藤和也の「読んでみたら」

【基本図書紹介① 謡曲集】

『謡曲大観』7巻(佐成謙太郎、明治書院)は、注釈、現代語訳を含む現行曲(現在演じられている曲)全てを収めた唯一の書で、数次復刊されています。

『謡曲集』3巻(田中允(まこと)、朝日新聞社、日本古典全書)は、金春流の車屋(くるまや)謡本に基づくのが特色で135曲を収録しています。

『謡曲集』2巻(横道萬里雄(まりお)・表章(おもてあきら)、岩波書店、日本古典文学大系)は、世阿弥自筆本をはじめとする、各曲の古い本文に基づき、極めて詳しい注釈と補注、わかりにくい部分の和訳、また、小段理論と呼ばれる横道氏の理論で能の構造を明らかにし、舞台での演出の注記まで入り、全102曲(その他30曲は現行宝生流)を収める、最も基本となる書です。

『謡曲集』2巻(小山弘志他、小学館、日本古典文学全集)は77曲に注と和訳付きです。

『謡曲集』3巻(伊藤正義、新潮社、新潮日本古典集成)は、出典研究の精華が盛られ、示唆に富む解題を付し全100曲からなる極めて有用な書です。

『謡曲百番』(西野春雄、岩波書店、新日本古典文学大系)は一冊に百曲を収めた最も新しい注釈書です。

『謡曲二百五十番集索引』(大谷篤蔵、赤尾照文堂)

【閲覧・入手方法】公共図書館や国立能楽堂地下図書室などで閲覧できます。入手はネットでの検索が便利です(amazon、スーパー源氏、高山本店、手塚書房、八勝堂、大学堂書店、五十嵐書店、わんや書店、檜書店、天地書房、天牛書店)

【基本図書紹介② 能楽論(伝書)】

『世阿弥・禅竹(ぜんちく)』(岩波書店、表章(おもてあきら)校中・加藤周一解説) 世阿弥の全伝書と手紙(風姿花伝(ふうしかでん)花習内(かしゅのうち)抜書(ぬきがき)・音曲口伝(おんぎょくくでん)・花鏡(かきょう)・至花道(しかどう)・二曲三体(にきょくさんたい人形図(にんぎょうず)・三道(さんどう)・曲付次第(ふしづけしだい)・風曲集(ふうぎょくしゅう)・遊楽習(ゆうがくしゅう)道風見(どうふうけん)・五位(ごい)・九位(きゅうい)・六義(りくぎ)・拾玉得花(しゅうぎょくとっか)・五音曲条々(ごおんぎょくじょうじょう)・五音(ごおん)・習道書(しゅどうしょ)・夢跡一紙(むせきいっし)・却来華(きゃくらいか)・金島書(きんとうしょ)・世子六十以後(ぜしろくじゅういご)申楽談儀(さるがくだんぎ)・金春(こんぱる)大夫宛(だゆうあて)書状(しょじょう)2通)と禅竹の主要伝書を収め、詳細な注釈と補注を付す最高水準の書です(禅竹の伝書は本文のみ)。

『新編日本古典文学全集 連歌論集・能楽論集・俳論集』(小学館、能楽論集は表章校中) 『風姿花伝・花鏡・拾玉得花』等の主要伝書を収め注釈と現代語訳があるのが特色です。

『新潮日本古典集成 世阿弥芸術論集』(新潮社、田中裕校中) 『風姿花伝・至花道・花鏡・九位・申楽談儀』を収め、注釈と本文の隣に現代語訳を付すのが特色。

『世阿弥能楽論集』(たちばな出版、小西甚一(じんいち)) 『申楽談儀』を除く世阿弥の全伝書を収め、現代語訳が付くのが特色。

『風姿花伝』(岩波文庫、野上豊一郎(とよいちろう)・西尾実、表章氏が校中に協力した書)

『申楽談儀(さるがくだんぎ)』(岩波文庫、表章校中) 『申楽談儀』は世阿弥の芸談集で世阿弥時代の能界の状況が分かりとても面白いです。

『金春古伝書集成』(わんや書店、表章・伊藤正義校中) 79世金春信高前宗家発見の『明宿集(めいしゅくしゅう)』を含む、金春禅竹(ぜんちく)・金春禅鳳(ぜんぽう)伝書を集大成した書です。

『風姿花伝・三道』(角川ソフィア文庫、竹本幹夫、現代語訳、注、解説)

『世阿弥伝書用語索引』(笠間書院、中村格(いたる)編)

【基本図書紹介③ ネットで閲覧可能な史料】

【野上記念法政大学能楽研究所・能楽資料デジタルアーカイブ】謡本・能楽伝書・付などを公開。金春流謡本では金春禅鳳(ぜんぽう)自筆本・金春喜勝(よしかつ)筆謡本・下間少進(しもつましょうしん)筆謡本・山崎宗鑑筆謡本・毛利家旧蔵金春喜勝筆謡本・毛利家旧蔵車屋本・吉川家旧蔵車屋本などが閲覧可能です。伝書では『明宿集』を始めとする金春禅竹伝書・『風姿花伝』などの世阿弥伝書が閲覧可能。金春家旧蔵の資料も含まれています。なお、1776年までの演能記録を集成した「演能データベース」も有益です。

【生駒(いこま)宝山寺(ほうざんじ)所蔵貴重資料電子画像集】世阿弥自筆能本・金春禅竹自筆伝書・金春禅鳳自筆謡本・世阿弥自筆書状・世阿弥伝書など27種の資料を公開。以上の資料は金春家に伝わっていたものです。

【観世アーカイブ】観世文庫が所蔵する能楽関係文献資料を公開する最大規模のサイト。世阿弥自筆能本を始めとする室町期・江戸期の謡本(禅鳳本・喜勝本など金春流の資料も多い)や世阿弥自筆の世阿弥伝書など多数の貴重資料が閲覧可能。

【椙山(すぎやま)女学園大学謡本画像】明和本・宝生流寛政版・正徳六年弥生本・山本長兵衛刊五十番綴下懸内百番本・外百番本(「元禄3年谷口七左衛門・伊勢や七郎兵衛刊下懸内・外百番本(下懸拾遺大成謡)」を模写・新刻した本。現在の金春流謡本の元になった金春大夫系の「六徳本」と共に、江戸期に広く流布。金春流謡本。車屋本系)などが閲覧可能。

金春家旧伝文書デジタルアーカイブ・法政大学能楽研究所】約2千点の史料。

[参考]謡本などの活字本と資料を突き合わせながら、東京堂出版『くずし字用例辞典』等で確認して行くと効果的です。

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金春流の定例公演

金春会定期能
2025年
1月19日(日)12:30開演
「翁」中村昌弘
「高砂」山中一馬
「葛城」本田光洋
円満井会えんまいかい定例能
2025年
1月25日(土)12:30開演
「歌占」中村昌弘
「三輪」安達裕香

矢来能楽堂

金春流の特別行事

薪御能
2024年5月
17日(金) 興福寺/春日大社
18日(土) 興福寺/春日大社
大宮薪能
2024年5月 19:00~
24日(金) 大宮氷川神社
25日(土) 大宮氷川神社
轍の会
2024年7月7日(日)14:00~
国立能楽堂 
「清経 恋ノ音取」本田芳樹
「伯母捨」櫻間金記
座・SQUARE
2025年7月21日(月・祝)
13:00~国立能楽堂
金春祭り
2025年5月28日(水)18:00~
能楽金春祭り 銀座金春通り
路上奉納能 
鎌倉薪能
2024年10月11日(金)
鎌倉宮境内 鎌倉・大塔宮
春日若宮おん祭り
2024年12月
17日(火)
18日(水)
春日若宮御祭礼式能
奈良市春日大社
弓矢立合、神楽式ほか